ThreatEchoが本番向けMicrosoft 365セキュリティを2.5週間でリリースし、5か月の開発期間を削減した方法

Microsoft 365セキュリティ統合の独自構築は、一見理にかなっているように思えます。しかしその後、運用保守コストが雪だるま式に膨らみます。ThreatEchoがどのようにその罠を回避し、わずか2.5週間で本番ワークフローをリリースし、継続的な統合オーバーヘッドを20〜30%削減したかをご紹介します。
著者:
Paul Barnes
公開日:

Microsoft 365のセキュリティ連携を自作するという構想は、常に合理的に思えます。Microsoft Graphのドキュメントは充実しており、Defender APIは公開され、Entra IDにはWebhookがあります。アラートを取得して正規化し、ワークフローを動かすだけ。そんなに難しいはずがない、と。

しかし実際には、挑戦したほとんどのチームが1年以内にその半分を作り直す羽目になるほど困難です。

運用初日のMicrosoft 365連携の姿と、300日目の運用コストとの間にあるこのギャップこそ、サイバーセキュリティ業界で誰も語らない最もコストのかかる問題です。

ThreatEcho(デジタルリスクインテリジェンスプラットフォームを開発した SafeTech Innovationsのチーム)は、このギャップを見据えて賢明な判断を下しました。内製化する代わりにOvereのPartner APIと統合し、 約2.5週間で本番環境のMicrosoft 365セキュリティワークフローをリリースしました。.

この記事では、その決断の具体的な内実と、より多くのセキュリティベンダーが同様の選択をすべき理由を解説します。

「Graphを使えばいい」が戦略にならない理由

Microsoft 365のセキュリティツールを構築する際、Microsoft Graphは真っ先に検討される出発点です。膨大な機能群を提供し、ドキュメントが充実しており、主要な言語すべてに対応したSDKが用意されています。

しかし、それは全体像のほんの一部に過ぎません。

本番環境レベルのMicrosoft 365セキュリティプラットフォームでは、少なくとも4つのソースからテレメトリを統合・調整する必要があります。ユーザー、メール、SharePointにはGraph。エンドポイントやIDのアラートにはDefender。サインインログや条件付きアクセスにはEntra ID。DLPやコンプライアンスにはPurview。それぞれが固有の認証モデル、スロットリング制限、ページネーション動作、さらには本質的に同じイベントに対する異なる記述形式を持っています。

単一テナントなら単なる面倒で済みますが、マルチテナントのMSSPプラットフォームにとっては、専任のエンジニアチームが1つ必要になるほどの負荷です。

ThreatEchoチームがネイティブ統合に必要な要件を洗い出したところ、そのリストは誰もが認めたくないほど膨大なものでした。

  • 複雑なOAuth処理: 顧客テナントごとに管理者同意フローが必要であり、オンボーディング体験を著しく損ないます。
  • トークン管理の仕組み: 全テナントのトークン保存・更新・ローテーションに加え、同意が取り消された場合の処理。
  • データの突合と正規化:Defenderの「疑わしいサインイン」は、Entraの「危険なユーザー」とは構造が全く異なり、Graph Securityの「アラート」とも完全に別物です。
  • ライセンスの制限:MicrosoftはSKU間で機能を頻繁に移動させるため、前四半期にE5テナントで正常に動作していたコードが、今四半期には暗黙のうちに失敗することがあります。
  • …そしてさらに、 継続的な運用の一貫性 の課題があります。APIの進化、スキーマの段階的変更、権限の細分化などが続き、一貫したマルチテナントセキュリティモデルの維持は、単発の統合プロジェクトではなく、恒常的なエンジニアリング業務と化してしまいます。

Safetech Innovations Global Servicesのテクノロジーディレクター、Jay Kay氏は率直にこう語っています。

「Microsoftは複数の領域にまたがる生のテレメトリを提供してくれますが、Overeは一貫したモデルを提供してくれます。私たちはスキーマの調整に追われるのではなく、検知ロジックや顧客向けのワークフローにエンジニアのリソースを割きたいと考えました」

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ThreatEcho.io powered by Overe

ThreatEchoが実際に2.5週間で構築したもの

この統合は単なる簡易コネクタではなく、本格的なマルチテナントセキュリティパイプラインでした。

約3日間をパートナー認証、Cognito統合、認証情報処理に費やし、4日間をプロビジョニングとサイトライフサイクルワークフローに充てました。残りの期間でアラートの取り込み、Webhook処理、そしてOvereの正規化データをThreatEcho内部のインシデントモデルへマッピングする作業を行いました。

最終的にチームは、通常であれば立ち上げに数か月を要する本番ワークフローの稼働に成功しました。信頼性の高いIDアラートによるアカウント自動無効化、しきい値を超える危険なサインインパターンへのMFA再登録の強制、確認されたアカウント乗っ取り時のアクティブセッション強制終了などが実現。また、機密サイトにおけるDLPや過剰共有のアラート発生時にはリアルタイムで外部共有をブロックし、ワンアクションでMSSP管理下の全テナントにベースラインの条件付きアクセスおよび共有ポリシーを適用できるようになりました。さらに、テナント構成の変更に応じてISO 27001やNISTのコンプライアンスマッピングも準リアルタイムで更新されます。

人々が驚くのは継続的コンプライアンス(Continuous compliance)です。大半のプラットフォームはある時点でのコンプライアンスレポートを作成できます。しかし、フレームワークに対するリアルタイムのドリフト(乖離)を示せるものはごくわずかです。統制範囲に影響を与えるMicrosoftのあらゆる領域で絶え間ない照合が必要となるためです。

真のコストは、決して最初の連携ではない

「当社の規模のチームにとって、それは新機能をリリースできるか、連携の世話に追われるかの違いです」

Jay Kay, Director of Technology, Safetech Innovations Global Services‍

多くの導入事例は「開発スピードが上がった」で終わります。しかし本件はそれよりも興味深いものです。初日の時間短縮こそが本当のレバレッジの源泉ではないからです。

ThreatEchoの試算では、Overeにより初期構築時のバックエンドエンジニアリング期間が4〜5か月短縮されました。見出しとして目を引くのはこの数字です。

しかし、より重要な数字は、 継続的な連携保守コストの20〜30%削減です。

これは、Microsoft側で仕様変更が行われる中で、Microsoft連携を維持し続けるためのコストです。反復的に発生して雪だるま式に膨らみ、成長中のセキュリティ企業の開発スピードを奪っていきます。

Microsoftネイティブの連携プラットフォームを扱ったことがある方なら、このパターンをご存じでしょう。数か月ごとに何かが壊れます。アクセス許可スコープが分割される、スキーマフィールドの名前が変更される、ライセンスの境界が変わる、といったことです。最初にコードを書いたエンジニアは別チームに移籍しています。修正には1週間の作業を要しますが、顧客にとっての新しい価値は何も生み出しません。

このパターンがGraph、Defender、Entra、Purviewにまたがり、数百のテナントで何年も続けば、保守コストは初期構築コストをはるかに上回ります。

それこそがOvereを採用する真の意義です。ThreatEchoが迅速にリリースできたことだけでなく、エンジニアが付きっきりで世話をしなくても稼働し続ける仕組みを構築できたことにあります。

手応えを掴んだ瞬間

どんな連携プロジェクトにも、チームが本格導入を決めるか、撤退を考え始める分岐点があります。ThreatEchoにとってそれは、テナントの一括オンボーディングでした。

「テナントごとにアプリ登録を行う代わりに、1回のパートナーAPI呼び出しでMSSPクライアントを一括オンボーディングし、正規化されたアラートを単一チャネルで取得できると気づいた瞬間、まさに『これでロードマップが変わる』と確信しました」

Jay Kay, Director of Technology, Safetech Innovations Global Services

MSSPファーストのプラットフォームにおいて、ボトルネックが検知ロジックになることはめったにありません。問題はオンボーディングのスループットです。テナントのオンボーディングを「顧客のIT管理者とのセッション調整」から「1回のAPI呼び出し」へと短縮できるものは、ビジネス全体の採算性を大きく変えます。

セキュリティベンダーにとっての意味

現在Microsoft 365向けのセキュリティ製品を開発しているなら、自前でネイティブ連携を作りたくなる誘惑は強いでしょう。エンジニアはものづくりが好きですし、「自分たちで作れる」と判断するのは技術チームにとって最も簡単な選択です。

しかしそれは、1年以上の開発スピードを犠牲にする原因に最もなりやすい判断でもあります。

Microsoft 365の規模で勝ち残っているベンダーは、最も独自のGraphコードを持っているベンダーではありません。Microsoftが仕様変更を繰り返しても背後の連携レイヤーの一貫性を保ちつつ、エンジニアが検知ロジックや対応の自動化、顧客成果の創出に時間を割けているベンダーです。

それがThreatEchoの賭けでした。2.5週間で成果を出し、四半期ごとにMicrosoftが仕様変更を行っても、もはやそれを追いかける必要がないという形で継続的な利益をもたらしています。

この分野でプロダクトを開発しており、本来の製品機能よりも連携レイヤーの開発・保守の方が製品らしく感じられ始めているなら、それこそが見直しのサインです。

導入事例の全文はこちら:

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